6/7からの払戻率変更は、人気薄に有利!

突然ですが、すべての馬の単勝を買い続けた場合、最終的に回収率は何%に収束すると思いますか?

80%??確かにそう思われがちです。そして6月7日のJRAの払戻率変更により、今後はそれに近づくと思われます。

でも、過去10年の全馬を買った場合の回収率を調べると71%しかないのです。

かく言う私もつい昨日までは80%だろうと思っていました。単勝・複勝の控除率は20%だから回収率は80%に収束するんだろう、と。

ところが過去データを分析しているうちに気付いたのです。

「あれ?過去10年について全馬の単勝を買っても80%にならないぞ?」

2004年1月以降、今年の6/1までに、すべての馬の単勝を買った場合の回収率は71%です。

過去10年という十分過ぎるサンプル数を用いても期待値であるはずの80%からはだいぶ離れた数字です。なぜでしょうか。

すぐに答えは出なかったのですが、色々とデータを見ているうちに人気薄ほど回収率が悪いことに気付きました。

表にすると以下の通りです。12番人気あたりから回収率が著しく落ちているのがわかると思います。

人気 勝率 複勝率 単回収率 複回収率
1番人気 32.3% 64.3% 76% 83%
2番人気 19.1% 51.2% 80% 83%
3番人気 13.6% 41.6% 82% 82%
4番人気 9.4% 32.6% 80% 79%
5番人気 7.1% 26.4% 82% 79%
6番人気 5.5% 21.5% 85% 81%
7番人気 4.0% 16.5% 81% 79%
8番人気 2.9% 13.2% 79% 81%
9番人気 2.2% 10.3% 76% 79%
10番人気 1.5% 7.9% 70% 78%
11番人気 1.3% 6.2% 71% 75%
12番人気 0.8% 4.4% 58% 67%
13番人気 0.6% 3.4% 57% 68%
14番人気 0.4% 2.5% 47% 60%
15番人気 0.3% 1.8% 41% 53%
16番人気 0.2% 1.3% 38% 49%
17番人気 0.2% 1.3% 34% 45%
18番人気 0.1% 0.7% 23% 36%

確かに人気薄馬の勝率が低いのは当然でしょう。ただ、その分当たった時のオッズによって回収率は調整されるはずです。

モヤモヤした気持ちが収まらなかったのでJRAのホームページに行って計算式を確認してみました。

その結果、以下の計算式を得て、少し理解できました。

http://www.jra.go.jp/news/2014……030305.gif

030305

見ても何だかわかりにくいですよね。

なのでここではものすごく簡単な例を挙げて説明しますね。

仮に出走馬が2頭しかいないレースがあったとします。馬①、馬②としましょう。

馬①の単勝馬券が900円買われ、馬②の単勝が100円買われたとします。合計1,000円ですね。そして馬①の方が圧倒的に人気を集めていることが分かります。

さて、このような状況の場合、これまでの私は、まず20%が控除され、残った800円を全投票者で奪い合うのだと思っていました。

ところが違ったんです!

その理由について順番に見て行きますね。

まず第1号式。ここではわかりやすく勝ち馬は1頭、すなわち同着はないものとします。

すると、1号式は馬①と馬②のいずれが勝った場合も、(900円+100円)×82%=820円となります。つまり、同着がない場合はまず1号式で全体のパイが82%に削られるのです。

続いて第2号式です。ここに疑問を解決するカラクリがありました。馬①が勝った場合と馬②が勝った場合で控除率が違うのです。

まず、馬①が勝った場合、2号式は(820円-900円)×10%で-8円です。

一方、馬②が勝った場合、2号式は(820円-100円)×10%で72円です。

この違いが回収率の差になっていたのです!

第3号式は単勝複勝だけに与えられるボーナスポイントで、今回の場合一率50円ですね。

ここで1~3号の式の値が出そろいましたので、払戻金の計算をしてみます。

まず馬①が勝った場合は、820円-(-8円)+50円で878円です。全体の投票が1,000の状況で払い戻しが878円ですから、かなりの額の払い戻しがありますよね。

一方、馬②が勝った場合は、820円-72円+50円で798円となります。こちらは80%を割ってしまいました。

このように人気薄馬の方が払戻金額が少なくなっていたのです。今までここまで調べたことがなかったのでかなりの衝撃でした。

なお、今回は馬②でも10%の得票数を集めていましたが、実際のレースの人気薄はもっと少ない得票数です。上の結果よりもさらに期待値が下がることは容易に想像できるでしょう。

以上が人気薄馬の回収率が低い原因でした。

さて、ところがこの払戻率が今年の6/7に変わったんです。それにより単勝は得票数(≒人気)に関わらずすべて控除率20%(=払戻率80%)となりました。他の馬券についても以下のテーブルの通りになりました。

新

詳細についてはJRAの以下ページをご覧ください。 http://www.jra.go.jp/news/2014……30305.html

世の中では、馬連の払戻率が75%から77.5%に上がった、という点や、逆に3連単の払戻率が72.5%に下がったというようなことしか話題になってはいませんが、実は単勝でも変わってるんです。人気薄が勝つときの回収率が上がったのです。一方、人気馬については、1番人気などの票数をある程度集めた馬にとっては不利になるはずです。

ちなみに他の券種についても同様、人気薄はこれまでよりも有利になっています(3連単やWIN5は払戻率が不利になった点と合わせて考える必要があり、一概にはどちらとは言えませんが)。では、全体的に人気薄の回収率が底上げされた分のあおりはどの券種があおりを食ったのでしょうか。それは人気馬がらみの3連単です。一番売れている券種から多めに取るというのは理にかなっているとは言えそうです。それによって3連単利用者が減るとも思えないですし。

逆に言えば、賢明な選択をするならば人気馬絡みの3連単はこれまでよりも不利になるので買わない方がいい、ということにもなるかもしれません。

とにかく、今回の変更はもっと注目されるべきニュースだと思います。なぜならTargetなどを中心とした過去データに基づいた分析を行うと、人気薄馬を過小評価してしまうことになるからです。以前は人気薄馬が勝ったレースでは全体のパイ自体を小さくされていたわけですからね。

と言っても、上に挙げた表において人気薄馬の回収率が劇的に上がるほどの効果があるわけではありません。この変更によって得られる回収率の上昇は最大でも1.2%です。積み重ねるとそれなりに大きい数字ですが、それでも12番人気以降については大幅に割り引いて考えなければいけないことに変わりはないと思います。

ただ、有効な戦略をもってすれば、回収率100%を超える可能性が高いのは人気馬よりも人気薄馬です。人気馬は安定している分、回収率もそこに落ち着いてしまいますから。

いずれにせよ、穴党にとっては朗報であることに間違いなさそうです。

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